SF『ニューロマンサー』

ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』(1984)読む。どうでもいいけど、私の生まれ年である西暦1984年はSF的な記号に満ちてはいないだろうかと自問してみる。たとえば、押井守の『ビューティフル・ドリーマー』の公開年、ジョージ・オーウェルの『1984』。映画、音楽、文学のカテゴリーのなかで新しい表現形式が隆盛してきて、アニメーションが評価されるようになったのもこのころからではなかっただろうか。些細な記号の共通点を発見しては密かに楽しむ癖のある私は一見なんでもないようなところから類似を詮索していって、何か大きな繋がりを(または仕掛けられたトラップを?)見出すことに執着しているところがあるのかもしれない。『ニューロマンサー』は近未来の電脳空間=サイバースペース(映画『マトリックス』、アニメ『攻殻機動隊』の元ネタ。ネット=網に接続されて自由に空間を移動できるようになった近未来を描いている。アイス=氷=セキュリティを破壊して企業のデータベースに侵入=ハッキングして情報を盗むのが主人公の仕事である。いまでいうインターネットのメタファー。)のなかで生かされる主人公ケイス(内蔵に毒を注入され、解毒剤を得るためには犯罪組織の命令に従わなくてはならない。)が犯罪組織の裏でコントロールしているA.I.の存在を追跡・解明しながらすすんでいくシナリオの構成をとっている。つまり、ケイスはA.I.に操作されながらA.I.から逃走するために、サイバースペースのなかで闘争をしかけることになる。ケイスには闘うしか選択の余地はない。プロットはメタフィクションの夢綴りのようで感覚でかんじるしかないうえに、80年代のガジェット用語(機械と肉体が直接的に接続するときに生じる痛み。現代の無線にはない生々しい感覚が表現されている。)、カタカナ、漢字、ルビ、ひらがな、の組み合わせの文体が刺激的で面白い。

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)